ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。

避妊手術で予防可能 犬と猫の子宮蓄膿症

目次


子宮蓄膿症とは


子宮蓄膿症とは、『子宮内膜の嚢胞性増殖と細菌感染による炎症(子宮内膜炎)が起こり、子宮腔内に膿性液が貯留した疾患』と定義されています。
要するに子宮内に膿が溜まり、細菌感染が起こるということです。

子宮蓄膿症の発症の原因は、発情後1〜2ヶ月の時期に放出される黄体ホルモン(プロジェステロン)によると言われています。
プロジェステロンの放出により、子宮内膜が増殖し嚢胞状構造を形成します。
これにより高齢で発情を繰り返すことで子宮内膜は肥厚し、細菌感染が2次的に起こることで発症すると考えられています。
細菌感染にしてもプロジェステロンが関連しており、免疫低下が細菌感染の温床になる可能性があります。

外陰部から膿が排泄可能なものを開放性、排泄できいないものを閉鎖性と呼びますが、閉鎖性の場合には子宮内に膿が蓄積されることで局所の細菌感染から全身性の細菌感染へと移行し、敗血症(循環不全、腎不全、肝不全といった臓器不全)に至ることで生命の危険に陥ります。
また、腹腔内で蓄積された膿で拡張した子宮が破裂した場合にはショック状態に陥る危険性もあります。


以下は手術で摘出した子宮と卵巣の画像です。
苦手な方はご注意ください。↓↓





膿によって拡張した子宮





治療・予防


このような危険性のある子宮蓄膿症では、閉鎖性の場合手術で蓄積された膿で拡張した子宮を摘出することが唯一の手段となります。
手術の手順としては避妊手術と変わりありませんが、健康な状態で麻酔をかけることができないため麻酔リスクも高く、感染源を除去しただけなので全身に蔓延した炎症により術後の合併症の発生率が高く、術後も元気になるまで油断できません。
子宮蓄膿症は、『避妊手術を行なっていない』、『高齢である』、『最近水をよく飲むようになった』、『元気・食欲がない』、『お腹が張っている』といった症状がある場合には発症を疑うことがあります。
もしこのような症状がある場合には、ご自宅で様子を見るのではなく、状態が悪化する前に動物病院を受診することをお勧めします。

また、現在『高齢で避妊手術を受けていない』という場合には、子宮蓄膿症を発症する前に避妊手術をして予防することをお勧めします。
子宮蓄膿症は避妊手術をすることで100%予防できる病気です!!


執筆担当:獣医師 上原 拓也
東京都豊島区南長崎2-2-1 軟部外科に特化した目白通り高度医療センター トップページはこちら>>
TEL:03-3565-6596