ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。

猫の足が動かなくなったら…血栓症?

目次


動脈血栓塞栓症について


動脈血栓塞栓症(後大動脈血栓症)聞きなれない病名かと思います
猫が突然声を上げて動けない、後ろ脚が麻痺したような状態、また足を異常に痛がるような症状の場合。
動脈血栓塞栓症という怖い病気かもしれません。
血栓塞栓症とは、血液中で出来た血栓(血の塊)が血管内に詰まることを言います。一番わかりやすい例が脳梗塞です。
動物では心臓病が原因となり、心臓の中で大きな血栓が作られてしまう場合があります。
それが後大動脈という太い血管に詰まると上記したような症状を出し死亡率も高い状態となります。
特に、後ろ足に向かう血管の付け根に詰まることが比較的多く、後ろ足が動かない症状や激しい痛みが生じます。
血栓症は現在治療が難しく、たいていの場合は血栓が自力で溶けるのを待つしかありません。



動脈血栓塞栓症の実際の症例


今回紹介するのは当院に緊急搬送されてきた猫ちゃんのお話になります。
足が動かないということで救急を実施している病院にて血栓症を疑われ、当院へ紹介搬送されました。 当院では、この救急疾患である血栓症について命を救うだけでなく、その後の運動機能も良好にしたいという想いから、バルーンカテーテルによる血栓除去手術を実施しています。
内股の動脈から細い管(カテーテル)を入れて詰まっている血栓を引っ掛けてくるという手術です。
血栓の除去が可能となれば、すぐさま血液の流れが再開するので、障害された組織も回復してきます。
運動機能も改善するし、呼吸状態も良くなり救命率があがります。
しかし、手術にはリスクや条件も存在します。血流の再開に伴い、今まで障害された組織から出た細胞成分や、炎症メディエーターが全身に流れることで生じる再灌流障害は、命に関わることもあります。
血栓症が生じてから時間と共に再灌流障害の重症度が上がるため、手術は血栓症が生じてからおよそ6時間までの間までしか実施できません。
また、手術がうまく行っても、その後に血栓が生じた原因に対する治療をしっかりと実施する必要があります。
再発する可能性も高い病気ですので、しっかりとした定期検診が必要です。
 後ろ足が動かなくなる原因にはその他にも椎間板ヘルニアや脊髄の病気など神経系の病気も多いです。
いずれも症状が出てから時間が経過した場合には、治療への反応が悪くなる可能性がありますので、異常と思った際には早めの来院をおすすめします。

執筆担当:獣医師 牛尾 俊之
東京都豊島区南長崎2-2-1 軟部外科に特化した目白通り高度医療センター トップページはこちら>>
TEL:03-3565-6596
ネット予約はこちら>>