ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。

馬尾症候群

目次


馬尾症候群について


馬尾症候群は、腰仙部(腰〜尻尾あたり)における脊髄神経の圧迫により生じる病気です。
腰仙部の脊髄は馬の尾のように先細りしているため馬尾と呼ばれることに由来します。
馬尾神経が圧迫されると腰の痛みから尻尾をあげなくなったり、排便や排尿のコントロールがうまくいかずに漏れてしまったり、酷い場合には後肢の麻痺を生じてしまいます。
この病気は体の動きに関連して圧迫が強くなったり、解消される動的病変に分類されます。似た病気に椎間板ヘルニアがありますが、椎間板ヘルニアは動きに関連しない圧迫なので静的病変といいます。
診断にはMRI検査や脊髄造影検査が必要となります。下の画像はこの病気のMRIになりますが、画像を撮影しているときは動かすことができないので、腰を伸ばした状態(伸展位)と曲げた状態(屈曲位)で分けて撮影しています。
 この症例では、伸展位で馬尾領域が背側と腹側から圧迫されている所見が認められます(青いラインの背骨が前の背骨と重なってオレンジの隙間が短いことがわかります。緑色の椎間板も馬尾神経を圧迫しています)。伸展位で認められた圧迫所見は屈曲位では解消されていることがわかります。




治療


治療には保存療法と外科療法があります。保存療法はNSAIDsなどの鎮痛薬の使用や安静がありますが、効き目が十分でなかったり、歳をとるにつれて段々と悪化していく可能性のある病気のため薬の効きが悪くなっていくことが多いです。
外科手術は下図ようにL7-仙椎の背側の骨を削り、馬尾神経にかかる圧を逃すための隙間をつくります。さらに、背骨の動きに伴う病気であることや、術後の不安定性を解消する目的でスクリューや医療用セメントを用いて固定をします。これにより動きに伴う神経の圧迫が解消され、症状の改善が認められます。
 
内科治療への反応が乏しい場合や症状の悪化が認められた場合、慢性経過となる前に外科治療が実施できると生活の質(QOL)が高い生活が長期間期待できます。
尻尾をあげなくなってきた、背中を丸ている、尿漏れや排便コントロールが出来ていないなどの症状は馬尾症候群が疑わしいため、早期の診断、治療が推奨されます。当院では診断から治療まで実施可能ですので、心当たりがある場合にはご相談ください。



執筆担当:獣医師 武藤 陽信
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