ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。

急性腎障害に対する血液透析

急性腎障害は腎臓が障害を受け、尿を作れなくなり尿毒症物質が急速に体内に蓄積する病気です。尿が全く作られない状態(無尿)では1-2日以内に命を落としてしまうことも少なくありません。
原因は植物や薬などの中毒、感染症、心疾患、尿路結石など多岐に及び、動物では原因がわからないこともあります。
急性腎障害の時は原因疾患に対する治療と尿を作りやすくするために点滴を行うのですが、治療反応が望ましくない場合は血液透析を行います。
血液透析は血液を体の外に取り出し、ダイアライザーと言う装置で浄化したのちに体に返す治療法で、機能を失った腎臓の肩代わりをするものです。
ダイアライザーはストロー状になった管が1万本も入っています。
管の内側を血液が、外側を透析液が流れていて、物質の拡散という原理で血液中から尿毒症物質を取り除きます。
首の静脈にカテーテルを挿入してここから脱血、返血を行います。
症例は柴犬、1歳11ヶ月、未避妊雌、体重4.5kgで食欲不振および水様性下痢を主訴に紹介元病院を来院しました。入院下で治療行っていたのですが、3日目から尿が出なくなり、腎数値の上昇が見られたため、その日のうちに当院に紹介がありました。
当院来院時の血液検査です。特に高カリウム血症は心臓の電気信号に異常をきたすためいつ心臓が止まるかもわからない状況でした。
当院来院当日からすぐに血液透析を行いました。無尿になって3日目に若干の尿の産生が認められましたが、まだ腎臓の機能は透析なしには不十分でした。
7回目の血液透析を終えた後から腎数値は透析を行わずに下がり始めました。その後は21日目に透析カテーテルの抜去を行い、食事療法のみで管理しました。
血液透析を離脱してから1年後の血液検査所見です。かなり腎機能も回復し、日常生活には異常もなく元気に過ごしています。一般的に重度の障害を受けた腎臓は数週間から数年かけて徐々に機能を回復していきます。

血液透析を行う症例の約50%が救命でき、そのうちの約50%が腎臓の障害が残ると言われています。しかし治療の適切な時期を逃してしまうと全身状態が悪化し救命率は落ちます。基本的な内科治療を長引かせて状態が悪くなる前に血液透析による治療を検討することが大切です。

執筆担当 三浦